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科長インタビュー

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外科 科長 白石 陽造

外科ではどのような診療をしていますか?
この病院は、がんセンターと夜間救急診療センターからスタートしました。しかしそれだけでは病院を維持していくことが難しいと考え、開院した2004年頃は椎間板ヘルニアの症例がとても多い時代だったことから、私の個人病院の方に椎間板ヘルニアの診療依頼がきたものについてはこちらの病院で外科の依頼を受けるようにしました。もうひとつには、がんセンターでの診療に伴い、どうしても外科が必要となってきたことがあります。このような経緯があり私がこれらの手術を一手に引き受けるようになっていったことから、外科として診療を始めることになりました。
現在は、がんセンター、総合診療科、消化器科など、眼科以外の院内の診療科の外科手術のほとんどを行っています。外科所属獣医師は増員されましたが、あらゆる手術に対応できるわけではありませんので、そのような場合にはその分野のスペシャリストを招きして対応しております。外科での診療動物は基本的に犬と猫です 。
どのような手術をされることが多いのでしょうか?
腫瘍の手術がもっとも多いですね。ほかには消化器関連でしょうか。椎間板ヘルニアは10年ほど前がダックスでの全盛期で、今は減ってきてはいるものの、まだ多いです。腫瘍の手術の中で脳外科に関しては、眼科同様に専門の獣医師がいますので、外科での対応はしていません。
少し話はそれますが、当センターの脳外科の先生は人の脳外科専門医です。その先生は獣医で、脳外科を専門にしたいと思っていたのですが、当時獣医学分野では脳外科領域があまり進んでいない状況でした。そこで、脳外科を勉強するために人の医師になり、人の脳外科で学んで専門医を取得されたのです。現在は医師としてまた獣医師として脳外科手術をされているという経歴の先生です。
さらに話がそれてしまいますが、過去には犬には脳腫瘍などほとんどない、あったとしてもごく稀だと言われていた時代もありました。それが、獣医療においてMRIを利用できるようになってから、犬の脳腫瘍は少ないどころか結構あることが分かってきたのです。過去には脳腫瘍と診断がつかなかっただけで、実際には想像されていたような少なさではなかったのです 。
なぜ専門診療として外科を選んだのでしょうか?
開業する前に勤務していた病院が外科症例の非常に多い病院で、そこでたくさん学ばせてもらいましたが、とくに外科を専門にしようと意識していたわけではありませんでした。外科はいつの間にか得意分野となっていましたが、決して好きな分野ではありません。手術の際は生命を預かり、処置の善し悪しがその後の患者の生活に直結する責任の重さにいつも押しつぶされそうになるからです。しかし個人開業しているからには来院していただいた方々を放り出すわけにはいきません。自分なりにできる範囲で頑張ってやってきましたところ、多くの経験を重ね現在に至っています。
病院を立ち上げようと思ったきっかけをお聞かせください
昔は夜間救急とうたっているような動物病院はほとんどありませんでしたから、夜間に動物を診て欲しいという人は個人の動物病院に行くしかありませんでした。自分の病院にも夜間に診察して欲しいと来る方が増えてきて、それに対応していたのですが、昼夜働いているうちにスタッフがぐったりし始め、疲弊してボロボロになっていってしまったのです。その頃、夜間対応をしている個人の動物病院はどこも同じような状況だったと思います。最初は頑張って夜間診療をこなしていても、そのうち無理が来るのは明らかだったので、地域に夜間診療を専門とする動物病院が必要だと強く感じていました。そのように思っていたときに、日本でがん専門の診療科をやりたいとう仲間がいたことから、夜間救急診療センターとがんセンターで病院を立ち上げてみようということになりました。
当初は立ち上げにかかわった獣医師だけで夜間診療をやっていたので、開院してから3年間は自分の病院とこちらの病院とで休む間もなく働いていました。31日のうち28日は夜に手術をしていたという月もありましたね。今考えるとどの先生もよく体が持ったものだと感慨深くすらあります。3年経って経営面などもろもろ安定してきたので、スタッフを増やして夜間診療を担当してもらうようになり、ようやく一息つくことができました。
特に相談して欲しい症例はありますか?
腫瘍と消化器が専門診療の大きな柱になりますので、腫瘍性疾患や消化器疾患を特にご相談いただければと思います。また、どこが悪いのか分からず何科に行くべきか困っているような症例のときには総合診療科に是非ともご相談ください。
病院を移転する計画があるとお聞きしましたが、現在どのような状況なのでしょうか
現在スペースもギリギリな中で診療を行っていますので、広い場所に病院を移転する予定でいます。これまでも最新の治療ができるよう取り組んできましたが、さらにその点を進めてき、たとえば免疫治療や再生医療などを取り入れてより高度な治療をしていきたいと考えています。また、専門性の高い治療をするためには研究も必要になってきますので、それらにも対応していけるような施設を作ろうと計画を進めているところです。来年(2018年)の春から夏にかけて移転できるよう頑張っています。
皆さまへ向けてメッセージをお願いします
病院の移転計画も含め、どの診療科においてもより安心して任せていただけるような病院になるよう、今後も一層努力をしていきたいと思っています。

(写真と記事:尾形聡子氏)

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