「なんかいつもと違う」「デキモノがあるみたい」「急に元気がなくなって・・」それとも、いつもと全く変わらないのに健康診断でみつかることもある「がん」。犬や猫でもがんに罹ることがあると聞いたことはあったとしても、「まさかうちの子がなるとは思ってもいなかった」というのがほとんどのご家族様の気持ちではないでしょうか。
動物の「がん」にも人と同様、様々なものがありますが、たとえそれがどのようなものであれ、「がん」と宣告されたときのご家族様のショックはとても大きいものでしょう。 ただし「がん」イコール「死」と考えるのは間違いです。「がん」とわかったとしても、その対処法は数多くあり、それに取り組んでいくためにも、ご家族様はショックを受けたままではいられません。動物医療の世界でも、完治は望めくとも「がんと付き合っていく」「がんをコントロールしていく」時代になっているのですから。
私たち飼い主は、動物を飼い始めたときから「別れ」を意識せざるを得ません。そしてそれが、「がん」と宣告された場合に、具体的に現れます。よく口にされる「覚悟を決める」と言う言葉、これは具体的にはどういったことなのでしょうか。
それは「別れ、死を迎える心の準備をし始めること」と考えてよいと思います。「簡単に言うけれども、そんなことはできない!」。確かにそうでしょう。しかし飼い主としての最後のそして最大の義務として、動物の死を看取ることがあります。私たち人間にもいつか死が訪れるように、生物として生まれたものにはすべて死がついて廻り、それを避けることはできません。
共に暮らしてきた動物たちの最期をどのように迎えさせるかについては、飼い主自身の死生観が問われます。自分はどのように死を受け入れていくだろうか、といったことを自問自答することとなるでしょう。残念ながら「完璧な死」というものはありません。何を選択しても、誰でも何かしら後悔の念を抱くものであることを承知しておきましょう。 私たちに今できることは、出会えたこと、そして共に過ごすことができたことに感謝するだけです。その感謝の気持ちとともに送り出す勇気を持つことが求められているのです。