JSAMC日本小動物医療センター

抗イヌPD-1イヌ化抗体を用いた
抗腫瘍効果検討のための臨床試験

ホーム > 臨床研究 > 抗イヌPD-1イヌ化抗体を用いた抗腫瘍効果検討のための臨床試験

目的

抗イヌPD-1イヌ化抗体を用いた新薬(犬用オプジーボ)が、犬のがんに有効であるかを検討すること。

PD−1とは?

医療において商品化されているニボルマブ(オプジーボ®)に類似した製剤です。ヒト用に創薬されたオプジーボは犬には効果を示さないため、それらを犬にも作用するよう工夫した製剤が、本試験では用いられます。したがって、本製剤はオプジーボと全く同じものではありませんが、機序に関しては同様の働きを示すことが期待されます。

対象となる犬

  • 対象となる腫瘍を有する犬
  • 対象となる腫瘍が病理組織学的に診断されていること
  • 犬の体調が比較的良好で、少なくとも6週間以上の生存が見込める犬
  • 生存期間中は当センターへの定期的な通院が可能であること

対象とならない犬

  • 免疫抑制量のステロイド治療を受けている犬、あるいは各種免疫療法(インターフェロン、活性化リンパ球療法など)を実施したことがある犬。
  • 病変に対し、化学療法、放射線治療、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の全身投与が現在行われており、その効果が持続中(CR、PR、SD)、または不明と判定された犬いる犬。
  • 妊娠中、授乳中及び妊娠の可能性のある犬。繁殖を目的とする犬。

対象となる腫瘍

  1. プロトコール1(P1) 顕微鏡的病変を有する高悪性度腫瘍における延命効果:顕微鏡的病変を有する高悪性度腫瘍(原発巣摘出から1カ月以内)で、外科治療単独で期待される生存期間が1年未満であるもの:
    • ステージ2以上の口腔内悪性黒色腫
    • 脾臓の血管肉腫
    • 四肢に発生する骨肉腫
    • 前立腺癌
    • 組織球性肉腫
    • 高悪性度軟部組織肉腫
    • 高悪性度肥満細胞腫(Patnaikグレード3あるいはKiupel高グレード)
  2. プロトコール2(P2) 様々な悪性腫瘍における肉眼的病変の縮小効果:測定可能な肉眼的病変を有する悪性腫瘍で、比較的腫瘍量がすくないもの。P2は当面の間、口腔内悪性黒色腫に限定します。
  3. プロトコール3(P3) ステージ2以上の口腔内悪性黒色腫に対する腫瘍縮小または増大抑制効果、および転移抑制効果:低分割放射線治療が照射されるステージ2以上の口腔内悪性黒色腫

治療内容

  • 2週間毎に合計5回の被験薬を静脈内投与。状態により、第6回目以降も継続することがあり。
  • 被験薬の投薬が終了しても、全身状態の評価と腫瘍の効果判定は6週毎に継続。

可能性のある副作用について

大きく分けて、2つの副作用が考えられます。1つは、製剤成分による副作用であり、異物を投与することに対する症状です。もう1つは、製剤の効果が過剰に認められる場合です。具体的には、免疫過剰状態による全身症状です。

  1. 製剤成分による副作用
    本試験において用いる抗イヌPD-1イヌ化抗体は、哺乳動物細胞を用いて作製された組換え蛋白質です。組換えイヌ化抗体蛋白を健常犬の生体に投与することの安全性については、安全性試験において確認されていますが、全ての個体にそれが当てはまるかは不明です。
  2. 製剤の効果が副作用として現れる場合(免疫過剰状態)
    本試験において用いる抗イヌPD-1イヌ化抗体は、免疫調節作用を有します。目的は腫瘍に対する免疫を活性化することですが、免疫は全身における機能です。本抗体の作用が過剰に働いた場合、免疫のブレーキが効かなくなり、自身の健康な細胞までを攻撃するような免疫過剰による副作用が生じる可能性があります。これまでの人およびマウスを用いた同様の研究から予測されていることではありますが、本治療の性質上、回避は不可能です。この副作用の出現には個体差があり、またその副作用の発症する割合などは現在のところ不明です。

参加にあたってのご注意

  • 被検薬は日本小動物医療センターにて投薬され、ホームドクターでの投薬はできません。
  • 試験参加にはご家族全員が十分内容を理解し、同意していることが必要です。なお、試験への参加はご家族の自由であり、途中でやめることも可能です。
  • 上記の対象に含まれる腫瘍でも、診察後に臨床試験に参加できないと判定される場合があります。
  • 臨床試験は入症頭数に限りがあります。予定に達した場合は臨床試験に参加できない場合がありますのでご了承ください。
  • 本試験は当センターの獣医師主導の臨床試験で、企業の協力のもと実施される臨床試験ではありません。
  • 被検薬は無償提供されますが、その他診療費(診察料、採血料、血液検査、画像検査、定期検診費用など)および放射線治療の費用(P3プロトコールの場合)は日本小動物医療センターの規定に従ってご家族にご負担頂きます。
  • 通常業務に支障が生じるため、ご家族からの電話、ファックス、メールなどによるお問い合わせはご遠慮頂いています。入症に関するご質問などがございましたら、ホームドクターを介してご連絡頂けますようお願い申し上げます。

臨床試験開始までの流れ

  1. ホームドクターから診察依頼書PDFの送付。
  2. 1. 依頼書から臨床試験適合と考えられた場合、予備診察を実施致します。その際、診断名の確認(スライドレビュー)を致します。臨床試験不適合の場合、通常診察のご案内を申し上げます。
  3. スライドレビュー完了後、水〜金曜日に本診察および精密検査を経て、入症が決定されます。
  4. 臨床試験の開始

ページトップへ