小腸や大腸の粘膜に原因不明の慢性的な炎症を引き起こし、食欲不振、嘔吐、下痢といった症状をもたらす病気を慢性腸症と呼びます。代表的な疾患としては、炎症性腸疾患(IBD)が挙げられます。
一般的には、食事療法、抗菌薬、副腎皮質ステロイド剤による治療を行うことで、症状が改善されますが、一部ではこれらの治療を行っても十分に効果が得られず、死亡に至ることもあります。
細胞治療は、細胞のもつ炎症を抑える働きや、免疫バランスを調整する働きを利用することで、従来の治療で効果がなかったワンちゃんに対しても、腸の炎症を抑え、便の改善や食欲の回復が期待できる最先端の治療法です。
細胞投与前の様子 | 細胞投与105日後の様子 |
慢性腸症(CE)を発症したワンちゃん(写真左)に細胞を投与したところ、投与から105日後には、粘膜の状態と臨床症状に改善が見られたと報告されました。(写真右)
<参考文献>
Pérez-Merino, Usón-CasaúsM et al(2015):Safety and efficacy of allogeneic adipose tissue-derived mesenchymal stem cells for treatment of dogs with inflammatory bowl disease Endscopic and histological outcomes.Vet J. 206(3):391-7