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科長インタビュー

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眼科 科長 小野 啓

眼科ではどのような診療をしていますか?
眼科全般の疾患の診断、内科の治療から白内障や緑内障、角膜、結膜、瞼のなどの外科手術まで対応しています。また、犬や猫だけでなくウサギやモルモット、鳥、爬虫類などのエキゾチックアニマルの診察も行っています。
なぜ専門診療として眼科を選んだのでしょうか?
大学で所属していた内科の研究室が小動物の眼科の診療や研究を行っているところでして、そのまま現在に至っているという状況です。とはいえ最初から眼科を目指していたわけではなく、実は、その研究室に入ってから動物にも眼科があることを知りました。眼科専門の研究室ではありますが、私のようにそのまま眼科を専門として続けている獣医師はそれほど多くありません。
眼科を専門にやってきて思うのは、専門診療をするための知識や技術を積み上げていく楽しさがある一方で、専門性が高まれば高まるほど、それ以外の診察を行ってはいけないと感じることです。たとえば眼科の診察ついでに皮膚も診てくださいと言われても、皮膚疾患については眼疾患と同レベルの診察ができないことが自分で分かっています。中途半端な知識では診ることはできないと考えていますので、だからこそ、眼科を専門として診療を続けているのです。
眼科全般の診療をされているとのことですが、特に相談して欲しい症例はありますか?
やはり眼科全般になるでしょうか。他の診療科では共通する検査項目がいくつもあるのですが、眼科の検査はそれに比べると眼科特有のものが多いという特徴があります。大学の教育でも眼科学のカリキュラムがすべて含まれているわけではありませんし、大学によっては眼科の先生がいない場合もありますので、一般診療をされている獣医師の先生方は眼科の疾患が分からないというケースが出てくるのは決して珍しいことではありません。
一般的な動物病院で眼疾患の診断をするための検査機器を備えているところは多くないですから、診断をつけることが難しくなってくると思います。ですので、眼の病気全般に関してご紹介いただければと思っています。
犬と猫ではどちらに眼疾患が多く見られますか?
犬が9割以上ですね。猫も結膜炎などありますが、ほとんどが犬になります。生物種によって起こりやすい病気がありますし、眼疾患を多く発症する犬でも、犬種によって罹りやすい眼の病気は異なります。また、エキゾチックアニマルの診察も行っていますが、眼科診療全体でみると、だいたい1〜2%くらいの割合になります。当院でエキゾチックアニマルの診療をしているのは、基本的に眼科だけです。
注意すべき眼の臨床症状などはありますか?
症状としましては、目が赤い、目やにが出るといったものが気づきやすいですが、これらの症状はあらゆる眼の病気の症状に当てはまるとも言えます。ですから、ひとつの症状だけを取り上げて注意してくださいとはなかなか言い難いところです。
眼科において、眼の機能を失ってしまう、つまり見えなくなってしまうということは、他の診療科では動物が亡くなってしまうことに匹敵します。ですから、白内障や緑内障、角膜の病気など、失明する可能性が疑われる場合にはなるべく早めに相談していただきたいと思っています。
失明する動物は多いのでしょうか?
治療できる場合もあれば、できない場合もありますので、さまざまな原因により失明してしまうことはどうしても出てきます。たとえば犬の遺伝性眼疾患の進行性網膜萎縮症(PRA)は治療方法が確立されていないため、発症すれば失明に至ってしまう病気です。しかしPRAに関しては、一時期に比べると減ってきているという感覚はありますね。また、犬の白内障については、以前は遺伝性疑いの若年性の白内障(発症が5歳以下)が多かったのですが、現在は老齢性(発症が6歳以上)のものと半々くらいになってきています。
今後どのような診療をしていきたいとお考えでしょうか?
より多くの症例を診察し、治癒率を上げていきたいです。たとえばどんな手術であっても、100%成功するとは言い切れないものです。外科だけでなく内科的にも、少しでも治癒率が上げられるような診療ができるよう努力したいと思います。そのためには、診療に関する情報や技術をアップデートしていき、並行して新しい検査技術や検査機器も取り入れていきたいと考えています。そして、もちろんですが、自分の経験も磨いていきたいと思っています。
皆さまへ向けてメッセージをお願いします
ご家族様の方からよく言われますのが、「ああ、やっと原因が分かってよかった、そういうことだったんですね」といった言葉です。しっかり診断をつけて、診断した病気について分かりやすく説明し、病気を治していく。実にシンプルなことなのですが、これからもご家族様にそのように言っていただけるよう、専門度を上げながら頑張ってまいります。
動物病院の先生方には、眼の症例でお困りのことがありましたら、どんな症状でも病気でも、いつでもご紹介いただきたいと思っています。いずれの病気もそうかもしれませんが、眼疾患も例外ではなく、早期発見、早期治療をすることが一番だからです。

(写真と記事:尾形聡子氏)

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