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科長インタビュー

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ICU 科長 松山 富貴子

ICUではどのような診療体制をとっていますか?
ICUは病院全体の入院患者を看護する科として設置しました。当センターのICUの特徴には、ほぼ24時間ICU 内に人がいることが挙げられます。主に動物看護師ですが、開院当時からICUにスタッフが常駐し、動物を看護できるようにしています。その他、ICU所属以外の動物看護師は、専門科目ごとに専任動物看護師を配置していることも特徴です。専任を増やすことはもれなく動物看護師の人数も増やさないといけなくなりますが、獣医師だけでなく、より専門性の高い動物看護師を育てたいという当センターの方針でもあります。
なぜ動物看護師の専門性を高めようとしているのですか?
第一に動物看護師に長く働いて欲しいという思いがあります。動物看護師は数年で辞めてしまう人も決して少なくありません。辞める理由としては、給与など待遇面や、仕事内容に頭打ちがあるなど理由はいろいろありますが、長く働きたいと思ってもらうためには、できるだけ動物看護師に仕事に対するやりがいを感じてもらうことが大切だと思います。そのひとつとして、専門性を身につけてもらおう、と考えています。
具体的には最初の3年間でいくつかの科を経験してもらい、その後、シニア看護師として専門性を高めていってもらう体制を取っています。ICUでのシニア看護師を希望する方は、とにかく動物を手厚く看護したいという思いが強い人が多いですね。
専門性を高めるために、病院内の指導のみならず、外部のセミナーへの参加や書籍等での知識の習得、資格の取得などを奨励し、それに対するサポートも行っています。
ICUというからには、やはり入院中の重篤な動物を看護するということがメインになります。時には緊急的な処置が必要となることもありますが、実は私自身は救急医療が専門ではなく、がんセンター所属の獣医師として開院当時から働いてきました。しかし、ICUの動物看護師の取りまとめはもちろん、各科の専門の獣医師からの指示をICUで管理し、適確にこなしていくには掛け渡し的な役目が必要なため、現在はICUの科長を兼任している状況です。
平均して何頭ぐらいの動物が入院していますか?
常時20〜30頭くらい、少ないときには15頭くらいです。25頭を超えてくると、代わる代わるいずれかの動物の面倒を一日中みている、という状態になります。外来の診療には1日に30〜50頭くらいの患者さんが来院されるので、かなりの割合で入院していると言えるでしょうか。二次診療の病院なので、どうしても重篤な患者さんが多いですが、ICUでは看護作業をより効率化していけるようにシステムの改善に努めています。
ICUとして、今後どのような看護をしていきたいとお考えでしょうか?
現在も手厚い入院看護ができていると思いますが、将来的にはもう少し看護の幅を広げて行ければと考えています。たとえばがんの緩和医療を行うようなホスピスが必要だと感じていますので、そのような患者さんも受け入れていけるようにしていきたいです。また、来年予定している病院の移転に伴い、ICUのスペースをもう少し広くし、また、ご家族の方が犬や猫と面会しながら一緒にくつろげるような場所もつくりたいと思っています。
ほかに今後の抱負がありましたらお聞かせください
動物看護師が長く勤められる病院にしていくためには、よりよい看護師教育が重要だと考えています。先ほどお話ししたように、当センターでは看護師にも専門性を高めてもらう方針を取っていますが、それはまだ院内においてだけであり、他の病院でも通用するような形にはなっていません。今後は、動物看護師の専門性を高めていく重要性や方法を院外に向けても発信し、広めていきたいです。また、動物看護師は女性が多いのですが、結婚や出産した後も職場に戻りやすい環境をしっかりと作っていきたいと考えています。
皆さまへ向けてメッセージをお願いします
ご家庭で過ごすのと同じような環境でお預かりすることはできませんが、入院中であっても動物が快適に過ごせるように配慮した看護を心がけています。一次診療の先生方、そしてご家族の方に、安心して動物を預けていただけるよう、ICU一同、今後も努力していきたいと思います。

(写真と記事:尾形聡子氏)

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